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第12回
[2010年03月10日 公開]
素数ほど不思議なものはない
中村 亨
昨年の4月に始まったこのコラムも、早いもので12回目となりました。
ご覧いただいたみなさま、ありがとうございます。
今回は、学校で教わることから少し離れて、素数(そすう)の不思議についてお話したいと思います。
素数はいくつあるか
1、2、3、…などの物の個数を表すときに使う数は、自然数(しぜんすう)と呼ばれます。
自然数のうち、1と自分以外のほかの自然数でわりきれる数は、合成数(ごうせいすう)と呼ばれます。たとえば、4、6、8、…などの偶数はどれも2でわりきれるので、合成数です。
逆に、1と自分以外のほかの自然数でわりきれない数は、素数と呼ばれます。たとえば、2や3、5や7、11や13が素数です。
探すのを続けると、17や19、23も素数です。もっと大きな素数を探すこともできます。
いくらでも大きな素数を見つけることができそうですが、本当にそうでしょうか? 実はいちばん大きな素数があって、その先にもう素数はないのではないでしょうか?
この問題には、古代ギリシャの人々も頭を悩ませたようです。
ユークリッドの『原論』には、素数がいくらでもあることが、次のとおり証明されています。
aを素数でわると、必ず1余ってわりきれないことになります。
aは、どんな素数よりも大きいので、素数ではありません。ですから、数aをわりきる、1でも自分自身でもない数があるはずです。
そのような数のうち、最も小さい数をbとしましょう。
bは素数です。
なぜなら、bが1でも自分自身でもないほかの数cでわりきれたとすると、cは、aもわりきることになります。すると、数aをわりきる、1でも自分自身でもない数のうちでbが最小ということに反するからです。
でもbが素数というのは、おかしいことです。
aを素数でわると、必ず1余ってわりきれないはずだからです。
どうしてこんなことになったかというと、素数が有限個しかないと考えたからです。
ですから、素数はいくらでもあることになります。
素数を予測する
素数にきりがないことはわかりましたが、それでも人々の素数への興味は薄れませんでした。
素数を小さい方から書き出していくと、素数がいつ出現するかはとても予測ができません。
たとえば、5と7のように、ある素数より2大きな数も素数のときがあります。このような2つの素数は、双子素数(ふたごそすう)と呼ばれます。
一方、素数と素数の間の間隔は、いくらでも長いことがあります。
たとえば、122(=2×3×4×5+2)から125(=2×3×4×5+5)までの4個の数はどれも素数ではありません。
かっこの中をよく見ると、素数が現れない好きな長さの場所を見つける方法がわかります。
それでも、いつ素数が出現するのかを計算する公式作りに挑戦した人がいました。そして、ほとんど成功したのです。
まったく、想像を絶することです。
その人は、ベルンハルト・リーマンという名前の、今のドイツの数学者です。彼は、1826年に生まれ、1866年に亡くなりましたが、1859年に書いた論文に、この素数を予測する公式の研究結果がまとめられています。
ただ、完全に公式作りに成功したわけではなく、肝心の部分に解明できなかったことが残りました。
公式を完成させるには、ゼータ関数と呼ばれる関数の値が、0になる場所をすべてつきとめる必要があります。
ですが、リーマンが当時の最先端の数学を駆使しても、そこまではできなかったのです。しかし、リーマンはとても詳しい計算をした結果、0になる場所がどこにあるかについての予想を立てました。
これが、その後の数学者たちを悩ませることになる、リーマン予想と呼ばれる予想です。
この予想は、解けないまま今年で151年目に突入しました。最近では、テレビ番組にもなりましたが、まだまだ解けそうにありません。
双子素数は無限にあるか
素数については、ほかにもわからないことがたくさんあります。
たとえば、先ほど登場した双子素数についても、無限にあるかどうかということはわかっていません。
素数は、自然数を組み立てる原子のようなものです。ですから、素数のことが詳しくわからないと、数の世界がわかったとはいえないでしょう。
しかし、その素数についてのナゾを解こうとすると、リーマン予想にしても双子素数のナゾにしても、数学のすべての道具を総動員する必要があるようです。
私には、そのことが数学のいちばんの不思議に思えます。
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1963年千葉県生まれ。東京大学大学院理学系研究科数学専攻修了。理学修士。
環境コンサルタントとして働くとともに、数学に関する一般向けの書籍の執筆、社会人向け講演等を行っている。生物・生態系や宇宙、機械や建築・都市など、自然と人工のさまざまなものが形づくる、数学的なからくりについて強い関心を持っている。特に好きなものは、隕石や、シーラカンス、バク、路面電車、ドリアンなど。
現在、「たけしのコマ大数学科」(フジテレビ深夜)に出演中。
著書等:
『数学21世紀の7大難問』(講談社ブルーバックス)
『脳が目覚める逆転発想力パズル』(竹内薫と共著、幻冬舎)
『インド式計算ドリル』『インド式計算ドリル ヴェーダ』『インド式計算ドリル練習帳』(監修)(以上、晋遊舎)
『たけしのコマ大数学科(第1期~)』(DVD、ポニー・キャニオン)
『インド式計算ドリルDS』(監修、ガンホー・オンライン・エンターテイメント)