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第10回
[2010年07月21日 公開]
アメリカの夏休みの過ごし方
織井弥生
アメリカの学校は、地域によって多少の差はありますが、6月から7月にかけて年度が終了し、8月中旬から9月上旬に新学年が始まります。
次の新年度が始まるまでの2ヶ月から2ヶ月半が、夏休みです。
今回は、この長い休みの過ごし方についてお伝えします。
宿題は無く、勉強は個人次第
アメリカの学校では、夏休みに宿題が出ることはまずありません。
大きな理由は、この時期が学年の切り替わりの時期であることです。
日本でも、進級前の春休みに宿題が出ることは、まれではないでしょうか。
提出を求められる課題は出ませんが、学校の先生からは、休み中の過ごし方として、二つのことを奨励されます。
ひとつは、本を読むことです。
アメリカの学校では、日ごろから読書の重要性が強調されていますが、夏の間も語彙力と読解力を維持・伸張するために、読書の習慣を続けるように言われます。
日本の小学校同様、課題図書が出されることもあります。
図書館を利用することは一般的ですが、学校を通じて子ども向け書籍の出版社から割引価格で本を購入できる仕組みがあり、大変便利です。
これは Scholastic Book Club と呼ばれるもので、毎月、レベル別に分類されたカタログが各家庭に配られ、個別に好きな本を選んで購入するものです。
わが家でも、キンダーガーテン以前から随分と多くの図書を、この Book Club で買ってきましたし、特に、夏休みの度に何冊も購入してきました。
長女は、最近は一般向けの本を読むようになったため、もっぱら電子書籍を利用するようになりました。
私も最近は紙の本はほとんど買わなくなり、ソニーの製品を愛用しています。
電子書籍はアメリカでは急成長中の市場であり、実際に使ってみるとひとつのデバイスに何十冊もの本や辞書を入れることができるので、読書好きには非常に便利な商品です。
もうひとつ、小学校低学年のうちは、夏休み中にドリルに取り組むことも、学校から推奨されます。
学校が「○年生の夏のワークブック」といったドリルを紹介しますので、それらを利用してもよいですし、一般に販売されているさまざまな種類のものから各自が好きなものを購入しても構いません。
ワークブックは、学年ごとに、算数、語彙、読解、作文などと分かれています。
わが家では、夏休み明けに現地校の小2に進級する長男のたっての希望で、4冊を買い揃えました。
これらをひと通りこなすことができれば、新学年をかなりよい状態で迎えることができるはずですが、今のところの進捗状況はいまひとつといったところです。
このように、夏休み中の学習については、学校からガイドラインは示されるものの、強制ではありませんので、各家庭の考えに基づいて取り組むしかありません。
このあたりは、夏休みといえば、自由研究、学校のプールや夏期講習のイメージが強い日本とは違います。
ちなみに、アメリカでは、塾はさほど盛んではなく、夏休みに塾の講習に通うということも、ほぼありません。
そもそも、塾(ラーニングセンター)の位置づけは、一般的に、不得意科目のサポートを得るためが主であり、子どもが小学校、中学校のうちは、塾に通うことはほとんどありません。
高校になってからは、大学進学に必要なSATなどの共通試験の準備のために通塾することはあります。
これまでわが家が体験した唯一の夏期講習は、地域の大学が提供する、読解力向上のための子ども向けプログラムです。
長女が渡米間もないころにリーディングでつまずきやすかったことから、4週間かけて1冊の本を読み、内容理解、語彙力の補強、読む速さの向上を図る講習に参加させました。
この講習をきっかけとして、娘は英語での読書に対する自信をつけたので、参加した意義はおおいにありました。
スポーツ活動は夏の定番
多くのアメリカの子どもにとって、夏はスポーツに精を出すときでもあります。
年間を通じて、男の子には、野球を筆頭に、アメリカンフットボール、サッカー、バスケットボール、水泳など、女の子には、ダンス(バレエ含む)、サッカー、水泳、バレーボールなどが人気です。
学校や地域の小さなグループから、大きな競技会にどんどん出て行く強いチームまで、どのスポーツにもさまざまなレベルの組織があります。
夏休み中は、強化練習や試合が入る種目も多く、子どもも親もいつも以上に忙しくなることも珍しくありません。
わが家の長女はシンクロナイズドスイミングに打ち込んでおり、1年をかけて地域の試合を勝ち抜いたあと、夏の全米大会に出場するというパターンが定着しつつあります。
他州で開催される遠征試合は、基本的にコーチと世話役の母親が同行しますが、親が応援にかけつけることもあり、労力や金銭的な負担は小さくありません。
わが家もこれまで、アリゾナ、フロリダ、ニューヨークへと応援に行きました。
長男のサッカーでも、平日は練習、週末は各種のトーナメント試合とで、夏休み中も休みなく予定が入っています。
夏休みだからこそ、別のスポーツに気軽に挑戦することもできます。
サッカー、バスケットボール、アメリカンフットボールなどのほか、サーフィン、乗馬、器械体操、ラフティング、その他アウトドアアクティビティなど、さまざまな趣向を凝らしたプログラムがあちらこちらで展開されています。
例えば、YMCAのサマーキャンプの分厚いカタログには、年齢別、期間別、開催時間別に、各種スポーツのクラスが並んでいます。
運動以外にも、クラフト(図画工作)のクラス、リーダーシップを育てるセミナーなども多く、全部で100以上の講座が並んでいます。
泊まりがけでない活動はデイキャンプと呼ばれ、休み中の子どもの過ごし方として、デイキャンプへの参加は一般的です。
朝9時から12時までの半日タイプ、朝から午後2時から3時までの終日タイプ、とさまざまで、希望をすれば延長保育をしてくれるところもあります。
ワーキングマザーにとっては、夏休みを乗り切るために子どもをデイキャンプに入れることが必要不可欠であることが多いようです。
遠方の祖父母宅に1,2ヶ月子どもを預けてしまう共働き家庭もよく見かけます。
長すぎる休みに危機感も
時間の使い方を持て余してしまうほどの長い夏休みに対し、危惧を唱える声もあります。
アメリカの小学校の年間授業日数は約180日と、日本より約20日少なくなっています。
PISA(OECD生徒の学習到達度調査)で、アメリカは、読解、数学、科学の各リテラシーの分野においてフィンランド、カナダ、韓国、日本などの各国に大きく水をあけられており、学習時間の少なさがひとつの背景にあるとも指摘されています。
独自の学校運営をするチャータースクール、私立校では、休みを短縮したり、1日の授業時間を長くしたりするところもあります。
しかし、州政府の財政事情に大きく頼る公立校ではこのようなことはなかなか難しいようです。
実際に、私の住む地域の公立校では、今年の夏休みは従来より【例年より】10日ほど長くなりました。
州の財政が厳しい場合、公立校の教育費が削られ、その結果、教員が解雇されることはよくありますが、休みを長くすることもコスト削減の方法であるわけです。
これには、当然ながら、保護者からの反発もありますが、実際にはどうすることもできません。
州の財政事情に子どもの教育を左右されることを嫌う保護者は、学費が高くとも、教育の質を守る私立校を選びます。
日本でも大都市圏では公立校に不安を覚える保護者のあいだで私立が人気のようですが、このあたりの保護者の心理は日米ともに同じだといえましょう。
わが家は、毎年夏休みに、日本に2週間から1ヶ月帰ることにしています。
親戚や友達に精力的に会い、また、子どもたちは塾に通わせたりと、いつもあっという間に過ぎてしまいます。
しかし、少しでも日本に帰ることで、子どもたちは日本の文化を肌で感じ取り、日本人であることを自覚するようです。
子どもたちのアイデンティティのバランスを取るために、夏の一時帰国は欠かせないものとなっています。
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幼少時6歳までをアメリカ合衆国にて過ごす。
上智大学外国語学部英語学科卒業。
大手メーカー勤務後、日米教育委員会フルブライト奨学生として、トップビジネススクールのノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院に留学、卒業(MBA)。
エンタテインメント企業、インターネット関連ベンチャー企業等で事業企画、マーケティングに従事。
2001年より日米間を行き来し、子ども(現在現地校小6と小1)を日本とアメリカの公立・私立校に学ばせる。
現在、カリフォルニア州に在住し、教育関連のコンサルティングと執筆を行うほか、アメリカ在住の日本人の現地生活適応を手助けする「海外生活サポートサービス」代表を務めている。
訳書に「マーケティング戦略論」(ダイヤモンド社)ほか。